彼女は今どうしているんだろう?

元気だろうか。

幸せだろうか。

 

 

今でも忘れられない人がいるんだ・・・。

 

 

 

*再会side深山*

 

 

 

「深山くんですか?」

学食でお昼を食べていたら声を掛けられた。

「はい、そうですが・・。」

声を掛けてきたのは見たことのない女だった。

整った顔をしている。

美人と呼ばれる類の女だ。

おれに何の用だろう?

「私は、真山美貴って言います。さっきあの子にあなたの事を聞いて・・」

そういって、彼女は学食の入り口のほうを見る。

そこでちょこっと手をあげる女の子がいる。

ああ、彼女か。

中学が一緒で、同窓会の幹事をやってる子だ。

大学が一緒だって聞いてたから、何回かしゃべったな。

彼女の紹介というのは分かったが、なぜ、真山さん?が、声を掛けてきたのか分からない。

普通、女の子に声を掛けられたら、ある種の期待を抱くが、彼女からはそんな雰囲気は感じ取れなかった。

おれの疑問を感じ取ったのか、彼女は言った。

「私は、中里さちの友達です。」

自分の顔が驚きの表情を作るのがわかった。

それくらい驚いたのだ。

 

 

「そっか。中里さんの友達なんだ。」

ということはつまり、

「えっと真山さん?君がここにいるってことは、中里も同じ大学だったんだ。」

「ええ、私たちは文学部なの。」

ぜんぜん気づかなかった。

こんな近くにいたんだ。

中里は元気にやってるらしい。

よかった。

中里はおとなしいほうだから、心配だったんだ。

 

「そっか、よかった。ところで今日は何か用かな?」

彼女が中里の友達だということは分かったが、おれに用があるとは思えなかった。

 

「彼女とさちの話をしていたら、あなたの話が出てきたものだから気になって。・・・」

彼女が説明する。

どうやらおれと中里の話をするつもりだったらしい。

おれも最近の中里のことを聞けるかもしれないと、喜んで応じた。

 

 

 

「あれ、美貴!どうしたんだ?勇輝も。」

健斗?真山さんと知り合い?

「うん、ちょっとね。健斗、深山くんと知り合い?」

「知り合いも何も俺たち友達だし。そっちこそ知り合いだったっけ?」

「友達!?そんなの聞いてないよ!」

あ〜そういえば健斗前に言ってたな、この大学に美人な彼女がいるって。

「健斗の自慢の彼女って、真山さんだったんだ。」

「ちょっと!勇輝!美貴に惚れたとか言わないでよ?俺の彼女だかんね!」

「はいはい、心配いらないって。あとで説明するから。それより、健斗、そんなに教科書もって、次授業じゃないの?」

「うわっ!もう始まるし!じゃ、俺行くけど、後でちゃんと説明しろよ。美貴!」

 

 

何か不思議な組み合わせだ。

「真山さんが、健斗の彼女か〜。何か意外?」

そう聞くと、真山さんは笑って答えた。

「よく言われるわ。」

でも、その表情で彼女は健斗がすごく好きなんだなって感じた。

健斗も。

そういえば、飲み会とかに連れてきたことなかったな。

他のやつらは自慢げに連れてくるのに。

それだけ、健斗は真山さんが大事だってことかな。

 

「・・・でもこれでちょっと楽になるわね。」

つぶやくように言った真山さんの言葉がおれの耳に入った。

「なにが?」

何か気になる。

「ううん。こっちの話。」

はぐらかされた?

 

 

 

キーンコーン カーンコーン

「じゃあ、今日はこの辺で。付き合ってくれてありがとう。」

そういうと真山さんは戻っていった。

今日は良かった。

中里のこといっぱい聞けた。

ああ、会いたいな。

 

健斗を通して何回か真山さんから誘いがあった。

中里が来るかもと期待したけど、そんなことはなかった。

もしかして、真山さんの嫌がらせか?おれの中里への気持ちに気付いてる?

はは、そんなわけないよな。

 

しかし、おれを待っていたのは意外な言葉だった。

「ねえ、こんなこと聞くのもあれなんだけど・・・深山くん、さちのこと好き?」

「え?」

う、やっぱり気付かれてたか。

でも、ここで彼女におれが中里のこと真剣だって分かってもらわなくては。

「うん。おれは中里のことが好きだよ。」

て、照れる・・・。

「それで、さちと付き合いたい?」

「・・できれば」

「じゃあ、私が協力してあげる。」

へ?

もっと、どれくらいとか突っ込まれるのかと思っていたおれは、拍子抜けしてしまった。

 

真山さんには、計画があったらしい。

聞いたときは驚いたけど、それで中里に会えるなら。

おれは了承した。

 

 

 

土曜日。

おれは松下通りに来ていた。

ここがうわさに聞くカップルのたまり場か。

そこらじゅうがカップルだらけだ。

 

携帯が鳴った。

真山さんが着いたらメールくれるって言ってたな。

 

To 深山くん

 

おはよう*

今着いたよ〜

喫茶店の前。

じゃ、頑張って!!

        

 From 美貴

 

は〜いよいよか。

何か騙すみたいだけど・・・。

 

 

 

あ、いた。

でも、ほんとに中里さんだろうか。

自信がなくなる。

 

「中里さん・・・?」

彼女が振り返る。

あ、彼女だ。

「やっぱり、中里さんだ。」

芝居ではなくほっとした。

会いたかった。やっと会えた。

おれは自然と微笑んでいた。

 

「深山くん・・・」

「久しぶりだね。こんなところで何してるの?」

うわ、白々しい。

中里は返事に詰まっている。

そりゃそうだろう。

 

真山さんの計画はこうだ。

この松下通りをナンパスポットとして中里に教える。

そこで声を掛けてきたやつを選ぶ。

実際は、ここでナンパするやつなんかいないから(だってカップルの待ち合わせ場所だし)

おれが声を掛ける。

おとなしい中里はびくびくしながら待ってるだろうから、おれだと知ってほっとする。

なつかしの再会ってわけだ。

 

 

「暇だったら少し、話さない?そこの喫茶店で。」

中里はうなずいた。

 

 

ケーキセットを注文するとおれたちは思い出を語り合った。

中学卒業以来か。

中里はさらに可愛くなっていた。

久しぶりに会ったというのに中里は緊張せずに話している。

真山さんの話では人見知りは直っていないということだから、おれと安心して話せるということは自分が信頼されているんだなと感じた。

 

 

中里とはじめて話したのはいつだったかな?

一緒のクラスになって可愛い子だなって思っていた。

でも、人見知りが激しいらしく友達も少ないようだった。

それが、ちょっとさびしそうに見えた。

このときはまだ、恋なんて感情はなかった。

何がきっかけだったんだろう。

気が付いたら話すようになっていた。

クラスの男子からは、うらやましがられた。

普通に話せるのはおれだけらしい。

うれしかった。

いつのまにか好きになっていた。

まわりは中里さんはおれのことが好きだっていうけれど、2人で話していてもそんなふうには感じない。

でも、好いてくれているのは確かだ。

それが、恋愛感情なのか分からなくても。

この関係が壊れてしまうような気がして、告白はできなかった。

 

 

 

携帯がメールの着信を伝えた。

誰だろ?

「ちょっとごめんね。」

そういってメールを開く。

真山さんだ。

 

To 深山くん

 

告白しちゃいなさい。

はっきり言わなきゃダメよ。

 

From 美貴

 

うぇ、どっかで見てる?!

まあ、仕方ないか。

それが目的だったんだし。

おれは覚悟を決めた。

 

 

「中里さん。」

自分の言葉に力がこもったのが分かった。

つられたのか、彼女の背筋がのびた。

「中里さん。中学のころからずっと好きでした。高校に行って、大学に入って、いろんな子に会ったけど、やっぱり中里さんのこと忘れられなくて。僕の彼女になってくれませんか?」

 

言ったぞ!

中里は何か考えている、そして何かを悟ったような顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

*おまけ*へ

 


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